大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)4636号 決定 1960年3月29日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人河野喬の弁護人福田甚二郎の上告趣意第一点は憲法違反をいうけれども、実質は単なる訴訟法違反の主張であり、同第二点は事実誤認の主張、同第三点は量刑不当の主張であって、いずれも適法な上告理由に当らない。

被告人金丸近の弁護人福田甚二郎、同小泉英一の上告趣意第一点は憲法違反をいうけれども、所論(8)に引用する原判決判示部分は、所論の同被告人の所為については盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律一条二項を適用しうるような事情が当時存在した事実は認められず、認定された限りの事情によれば同条項もしくは刑法三六条を適用する余地がないとの趣旨を判示したものであるから、所論は事実誤認を主張しこれを前提として法令違反、憲法違反をいうものであり、その他の所論は事実誤認の主張に帰し、すべて上告適法の理由とならない。

同第二点は違憲をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張にすぎず上告適法の理由とならない。

同第三点は再審事由の主張であって適法な上告理由に当らない。〔既に第一審において証人として供述したその供述内容に関する申立は刑訴四三五条六号にいう「明らかな証拠をあらたに発見したとき」にあたらないこと当裁判所の判例の趣旨とするところである(昭和三三年(あ)第二六一号、同年四月二三日第二小法廷決定)。〕

同第四点は事実誤認の主張であり、同第五点は憲法違反をいうが実質は単なる訴訟法違反の主張であり、同第六点は憲法違反をいうがその実質は原審で主張判断のない事項についての訴訟法違反の主張に帰し、同第七点は量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例